ゲームミングPCを買おうと思ったとき、最初に考える選択が、デスクトップにするか、ノートにするかの2択です。今回の記事では、両者の長所・短所を整理し、選び方の基準を解説していきます。ゲームライフの相棒選びの参考になれば幸いです。
【執筆者紹介】
畑野壮太
PC・ガジェットなどのジャンルを得意とするライター、家電製品総合アドバイザー。GetNavi、ASCIIなどのメディアを中心に、執筆活動を行っている。自作PCを愛用しており、パーツはコスパ重視で選ぶ主義。数千時間プレイしたタイトルがあるほどのゲーマーでもある。
結論! 設置場所を確保できる&持ち運ばないなら、デスクトップがおすすめ
筆者が考える結論を先に述べると、「設置場所を確保できる&持ち運ばないならデスクトップ」です。というのも、デスクトップはノートにはない長所をたくさん持っているから。詳しくは後述しますが、カスタマイズ性の高さ、(パーツの構成にもよりますが)静粛性、接続端子の豊富さなどがそれにあたります。
一方ノートには、小さくて持ち運べるという、デスクトップでは絶対に叶えられない長所があるものの、サイズを抑えるために犠牲になっているものが少なくありません。ノートを選ぶ場合は、設置スペースがない、あるいは、持ち運びたいというニーズがある場合に限定して良いと、筆者は考えています。
筆者がデスクトップをおすすめする5つの理由
上でも少し触れましたが、ここでデスクトップの長所を整理してみましょう。ノートと比べて優れている点を、以下に列挙します。
- パーツのカスタマイズ性が高い
- パーツが高性能
- 動作音が静か
- 接続端子が豊富
- モノとしての存在感がある
これらの5項目について紐解いていきます。
長所1:パーツのカスタマイズ性が高い
デスクトップの長所のなかで、最たるものといえばこれでしょう。特に自作する場合は、マザーボード、CPU、グラフィックボードなどの各種パーツはもちろん、外観を決めるケースも含めて、多くの選択肢から選べます。BTOショップですでに組み上がっているものを買う場合であっても、ノートに比べればカスタマイズの幅は豊富です。
また、改造の余地が大きいのもデスクトップの強み。あとからグラフィックボードを換装する、SSDを追加するなどといったことが可能です。予算を抑えて購入したデスクトップでも、ユーザーのニーズに合わせてのちのちグレードアップしていけば、一台のPCを長く使えます。
長所2:ノートに比べてパーツが高性能
これは、特にグラフィックボードについていえる点です。ノートの場合、GPUはノート専用のものが使われます。同じシリーズであれば性能は同一と思いがちですが、ノート専用のGPUはデスクトップ向けのものと比べてスペックが若干低くなりがちです。
長所3:動作音が静か
PCが高性能になればなるほど、発熱も大きくなります。PC内部の温度が高くなればそれだけ急速にPCを冷やさなければならないため、空冷の場合はファンの回転数が上がり、駆動音も大きくなります。その点、デスクトップは内部に空間があるため空気が流れやすいうえ、多数のファンや大型のヒートシンクを設置できるため、ファンの回転数を極限まで上げずともある程度の排熱が可能。一方ノートでは、PCの負荷が上がるとファンが高速回転し、キィーンという高い音が鳴ってしまいます。
また、デスクトップなら水冷という選択肢もあります。水冷は、空冷と比べて静粛性が大きく増すうえ、冷却効率も高いので、PCがパフォーマンスを発揮しやすくなります。特に、高スペックなパーツを採用する場合は水冷がおすすめ。ノートにも水冷を採用したモデルはあるにはありますが、稀な存在です。
長所4:接続端子が豊富
採用するグフラフィックボードやケースにもよりますが、デスクトップはノートに比べて接続端子が豊富です。また、マザーボードやグラフィックボードの選択によって、映像出力端子の種類を選べるのもデスクトップのメリット。この点を見ても、カスタマイズ性が高いといえます。
長所5:モノとしての存在感がある
デスクトップは、当然ながらノートに比べてサイズが大きくなります。大きな設置スペースが必要になってしまうのは弱点ですが、そのぶん、モノとしての存在感は格別。ケースをデザインにこだわったものにすれば、部屋の中でも特に目立つ存在になるでしょう。ゲーミングPCとしての機能を備えたうえで、ユーザーの所有欲をしっかり満たす一台になります。
ここまで紹介してきたように、デスクトップはノートにない長所を多数持っています。しかし、近年ゲーミングノートが人気を集めているのは、省スペースで設置できる、小さくて持ち運べるという、デスクトップにはない長所を持っているからです。次は、ゲーミングPCに可搬性が必要か、という観点の話をしていきます。
ゲーミングPCに可搬性は必要か
ゲームをする環境を整える場合、必要になるのはPC本体だけではありません。デスクトップの場合はディスプレイやキーボードが必要ですし、ノートでもマウスが必要になります。場合によってはヘッドセットなども使うでしょう。
またオンラインゲームでは、通信環境を安定させる必要がありますから、無線なら電波が安定した部屋、あるいは有線接続ができる環境を用意しなければなりません。周辺機器の必要性や通信環境に左右される面がある以上、ゲームをプレイする部屋はある程度固定した方が便利というのが、筆者の考えです。それでも可搬性が求められるというのは、どのような場合か考えてみます。
ひとつは、友人の家など、自宅の外でもゲームをしたいというケース。あるいは、ゲーミングPCを仕事用としても使っていて、出先に持参する必要がある場合です。こういったケースでは可搬性が必要なのでノートを選択することになりますが、ゲーミングPCに求められるニーズとしてはやや限定的かもしれません。これは筆者の推測ですが、ゲーミングノートが選ばれる理由の多くは、省スペースで設置したいというニーズから来るものではないでしょうか。裏を返せば、それだけデスクトップのゲーミングPCはデカいということです。
ゲーミングデスクトップはデカくなりやすい
デスクトップの欠点は、ここに集約されます。マザーボードをMini-ATXあるいはMicro-ATXにしたうえで、小型なケースに収めれば小さめのゲーミングデスクトップを作ることもできますが、その場合はグラフィックボードなどのパーツも小型なものにする必要があります。大きなCPUクーラーも設置できなくなるので、PCの性能は控えめにならざるを得ません。逆に考えると、一定以上のスペックを備えたゲーミングデスクトップともなれば、必然的にサイズが大きくなるのです。
では、どれくらいの設置面積が必要なのか。その数字はどのケースを採用するかにかかってきますが、ここでは一例として、ギガバイトのハイエンドPCケース、AORUS C300 GLASSを参考にしましょう。AORUS C300 GLASSのサイズは、高さ46.9cm、幅21.1cm、奥行き45.8cmです。PCの背後から伸びる配線を考えると、設置スペースの奥行きはケースの実寸+15cm程度は必要になるため、結構な面積を要します。机の上に置くには厳しいケースも出てくるでしょう。しかも、AORUS C300 GLASSはケースの中ではミドルタワーと呼ばれる中型〜やや大型くらいの位置付けで、もっと大きいケースもあります。デスクトップを選ぶなら、設置場所の寸法を事前に測り、ケースがそこに収まるかしっかりチェックしなければなりません。
総じて、デスクトップのゲーミングPCを導入するのは、スペース上の問題が大きいのです。それだけ、ゲーミングノートが存在する意義は大きいといえます。
ゲーミングノートとデスクトップは補完関係
一昔前は、ゲーミングPCといえばデスクトップが当たり前でした。ゲーミングノートという選択肢が存在しなかった時代は、ゲーミングPCには大きな設置スペースがいるというのが前提になっており、PCゲームをプレイするハードルが、いまよりも高くなっていました。そんななか、技術の進歩によってハイスペックなゲーミングノートが登場し、省スペースでPCゲームを楽しむことを可能にしました。
すでに述べてきたように、「設置場所を確保できる&持ち運ばないならデスクトップ」を選ぶべきというのが、筆者の考えです。ただし、デスクトップを置くために必要なスペースは小さくありません。そんなときのために、ゲーミングノートという選択肢があります。ゲーミングPCにおけるデスクトップとノートは、それぞれの弱点を補完しあう関係にあるのです。